アリス・ウォータースさんに学ぶ食・農・暮らしの持続可能な未来

人は食べたもので出来ているといいます。

それならば、ファストフードばかり食べファストフードの価値観に囲まれている人は、

 

『私は安くて早くて簡単な人間です』

 

と言っているようなものです。

 

 

4月21日、滋賀県にあるびわ湖ホールにて、「アリス・ウォータースさんに学ぶ 食・農・暮らしの持続可能な未来」と題したシンポジウムへ参加してきました。主催は滋賀県、滋賀県教育委員会、滋賀経済団体連合会。後援は関西SDGsプラットホーム。

 

このシンポジウム、行政と経団連がタッグを組むと、こんなにもしっかりとした運営がされるのか…!とびっくりしました。

 

西日本初のオペラ劇場としても知られ、国際的にも高い評価を得ている美しい滋賀県立びわ湖ホールを会場に、託児、手話、同時通訳‥すべてがバッチリ完備され、託児を利用した知人によると、託児の内容も大変細やかで驚いた、安心してシンポジウムを聴講できた、と喜んでいました。これがすべて無料だなんて。滋賀県の意識の高さに驚かされました。(岡山県は果たしてどうだろう…?)

 

ゲストには、三日月 滋賀県知事、越 大津市長が二人並ぶという豪華な布陣。

 

「ようこそ滋賀へ。私どもは、琵琶湖を未来からお預かりしています」と挨拶をされた滋賀県知事。なんて素晴らしい言葉のチョイスをなさる人なのだろうと感心しました。さすがは、環境県としての舵を切った前の女性知事:嘉田前知事の後継と謳われるかたですね。壇上へ上がるアリスのエスコートもさり気なくこなしていました。

 

 

冒頭の言葉は、エディブル・スクールヤードの創始者、今回来日したアリス・ウォータースの基調講演の中で特に心に突き刺さった言葉です。

 

荒廃した公立中学校を、食育菜園をつくることで子どもたちや教師たちに希望をもたらしたアリスの言葉のひとつひとつは、英語がわからない私でさえも、その力強い声の調子に心迫るものを感じました。おそらく、ここに至るまでにはいくつものハードルがあったのでしょうが、子どもたちが自律・自立できるために、子どもたちに希望ある未来を渡すために、アリスは常にブレることなく乗り越えてきただろうことが、その毅然とした中にも愛ある佇まいや瞳の輝きから想像できました。

 


会の中盤は、3つの小学校の実践紹介。すでに全国のいろんな学校で、昔から地元の第一次産業(農業・漁業・林業)についての総合学習が行われていますよね。地域の従事者の方々を講師に、子どもたちがフィールドで実践をしたり、座学の出前授業を受けたり。さらにはそれらを発表するなど、子どもたちの工夫を凝らした学びの数々。

 

その中でも高い評価を得ている3つの小学校へ、アリスが訪問したそうです。

 

この発表の前日の訪問だったにも関わらず、すでにパワーポイントへ取り込み大きなスクリーンへ映し出されていて、先生方の本気度もすごいな…とまたびっくり。中には、2017年の生物多様性アクション大賞:SDGs大賞を受賞した小学校のプレゼンもあり、もうその活動の素晴らしさに目を白黒するばかりでした。ここへ、アリスの提唱するエディブル・スクールヤード・プロジェクトの理念が反映されれば、世界中の子どもたちと繋がれるはず。それは世界平和への第一歩になっていく‥というと、大げさでしょうか。

 

終盤は、4人によるパネルディスカッション。

パネリストは、アリス、一般社団法人 Think The Earth 理事の上田壮一氏、三日月大造滋賀県知事、越 直美大津市長。モデレーターは、ピーター.D.ピーダーセン氏。

 

今巷で話題のSDGs に絡めたお話を始め、質疑応答の時間も設けられ、会場からはいろいろな質問が寄せられました。

 

どの質問にもアリスは丁寧に自分の行ってきたことを背景に答えていましたが、おそらくそれらは、自分自身と向き合い深く考え続けることで、自分で解決するべき事柄なのだと思います。

 

それはまさしく、自分で考え、生きる力を養っていく子どもたちに伝えたいこと。私たち大人にも必要な事柄なのですね。

会終了後は、堀口博子代表・西村和代共同代表も合流し、ESYJ の仲間たちと琵琶湖畔のオーガニックカフェで夕食を共にし、これから自分たちが日本の各地でどんなふうに進むべきなのかを語らいました。


滋賀県の「お米とお茶を薬を使わないオーガニック農業に切り替え、教育、農業、地域が持続可能な発展をゴールに動き出す」との突き抜けた宣言を皮切りに、今後エディブル・スクールヤードの理念は全国の教育界へと広がっていく気がします。学校、地域、さまざまな領域が分断されることなく横断されることで、「面倒なことが増えていく」のではなく、「考え方の転換」によってパラダイムが軽々とシフトされていくことを体験する人が増えていくことになるだろうと思います。

 

もちろんここ「&Garden 庭の教室」も、とっても小さな歩みではありますが、子どもたちにその体験をしてもらいたいなと思います。